HK-808改造

01版 2018.02.26
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HK-808を改造しました。本体には手を入れず、機構部品追加のみとしています。結果、打鍵音は好みの静かな音になり、打鍵感覚もソフトになりました。
ハイモンドさん、HK-808愛好家の皆さんにはお叱りを受けるかもしれません ( _ _;)





HK-808外観(改造後)

はじめに

40年以上前からHK-3を使用しています。この電鍵は非常に打ちやすく現在でも使用しています。HK-808はHK-3入手から数年後だったと記憶していますが、それでも購入から40年近く経っています。

若い頃は主にHK-808を使用していました。高速で正確に打てるので快適に使えます。但し、当初からHK-3に比べて硬い感じが気になっていました。

歳を重ねるにつれ、高速で打つよりゆっくり静かに打ちたいという気持ちが強くなり、HK-808のカチカチ音や打鍵時の硬い感覚が気になり出しました。

HK-808を愛するペット(犬)に例えると、いつまでも元気な808君と年老いてついていけなくなった自分がいます。我が子のような808君との一体感を取り戻したいとの思いから、ついには飼い主の我儘から改造という暴挙に出てしまいました。

検討

打鍵音の低音化と打鍵感覚のソフト化を目指します。

接点構造や材質変更等、本体に手を入れる改造は困難なので当初からあきらめました。

以下の各距離についてHK-808とHK-3を比較してみました。表は、HK-808の各長さそれぞれを1とした時の比率を示しています(L1,L2,L3は物差しで測定したため正確ではありません)。
  
   @軸受け ー 裏接点 : L1

   A軸受け ー 主接点 : L2

   B主接点 ー つまみ : L3

 
 ( 接点名称 ;ハイモンド・エレクトロ社 「HK-808 第2図」より )

電鍵  比率  
L1  L2  L3
 HK-3  0.91  0.97  0.81
 HK-808   1  1  1


予想とは裏腹に、HK-3が全て短いことがわかりました。

この結果から、距離が大きく影響しているとは言い難いのかもしれません。

しかしながら、スウェーデンキー等、打ちやすいと云われている電鍵は、接点の位置や構造、材質に違いはあるものの、単純に考えて、どうも、レバーが長いことも関係しているのではないかと考えました。

実際にやってみないことには分かりません。そこで、HK-808レバーを現状より長くすることで自分好みの方向へ変化するか、つまみ位置を現在の位置から更に手前へ移動させてみることにしました。上図のL3を大きくすることになります。(HK-802のつまみ位置変更により好みの感覚へ変更できるようで、期待が持てます。)

レバーの交換は出来ないので、レバーにアルミ棒を追加します。これなら何時でも元へ戻すことが出来ます。

改造




追加部品

長い棒の一番下は4mm、上の両側は3mm、最も短い2つの棒の1箇所は3mmのタップを切っています。




取り付け後

追加する長い棒はブレ防止のためレバーへ2箇所で固定しています。
一方はつまみ取付ネジ穴を利用し、他方は短い棒で挟むように固定。
つまみの元位置から新位置まで26mmです。




改造前                 改造後
追加した棒の先端がフタと接触しそうでしたが、何とか接触せずに済みました。

測定

改造効果をビジュアルに確認するため、打鍵音のスペクトルを測定しました。

測定にはフリーソフトのWaveSpectraを使用しています。マイクはwebカメラ内蔵の安物マイクを使用しました。音声帯域を重視した特性のようです。ここにf特を示します。測定に使用したSG(AG-202)はレベル一定、スピーカ特性はフラットと考えてよいので、示した特性はほぼマイク特性と考えて良いと思います。この特性を踏まえて以下の取得データを観る必要がありますが、傾向は掴むことができています。

電鍵カバーによる反響音が取付け状態によってクリティカルに変化するため、測定時はカバーを外しています。

改造前 (図1) と 改造後 (図2および図3) のスペクトルを以下に示します。

各図の上のカーブが短点連打時のピーク値をホールドしたカーブで、下は非打鍵時のノイズです。裏接点と主接点が叩く音はかなり異なりますが、カーブはその2つのスペクトルの合成として表現しています。

図3は、改造したHK-808の下に皮革の端切れ2枚を敷いて測定したカーブです。

 図1  改造前


   図2 改造後

 
   図3 改造後
(下敷き有り)

+
上の3つのグラフを比較しました。
●1 :1.2k、2.2k、8kHz付近 (○緑) ・・・ 改造前後の振幅変化小
   → 接点および接点Aの振動音か
●2 : 0.7〜0.8、2.8kHz付近 (○赤) ・・・ 改造後、振幅減衰大
   → 改造による構造変化の影響と考えられる
●3 : 5.3kHz付近 (□赤) ・・・・・・・・ 図3で減衰大
   → 皮革下敷きによる影響と考えられるが度合いは不明
この他、460Hz付近の成分が400Hzへ変化したように見えますが、聴感への影響有無は不明です。

以上、これらは大雑把に観たものです。詳細分析に入るとのめり込みそうなのでこの辺で止めておきます。

結果

改造により打鍵時の音は静かになり(低音化、静音化)、打鍵感覚も非常にソフトになりました。

<聴感 >
・接点を叩く音 (周波数) は改造後も変化が感じられません。(●1)
・廻りの構造物(レバー等)を振動する音は明らかに低くなった様に感じます。(*)

<打鍵感覚>
打鍵時の感覚も非常にソフトになりました。残念ながら、ソフト感を具体的に表現することができません。

<下敷きの効果>
本題から外れますが、皮革の端切れ2枚を重ねた下敷きを敷いて効果を調べました。
打鍵感覚は非常にソフトになりました。又、机へ振動を伝えにくくなったためか、当初目標にしていなかった静音化にも大きな効果があります。5.3kHz付近の減衰も関係するかもしれません。(●3)

* : 「低音化」の測定スペクトルと聴感について

聴感に影響していると思われる一部の成分が、改造後は消えているように見えます。(●2)
この様に、聴感では一部の成分が消えて無くなることで結果的に低音化の効果を感じているのかもしれません。

レバー容積増により、より低い方向への変化が観測されると予想していましたが、顕著な傾向は観られませんでした。寧ろ、低音化は聴感に影響があると思われる成分の存在有無が影響しているように見えます。但し、今回の測定データだけでは不足であり、それが事実かどうか分かりません。

おわりに

電鍵は、音を発し振動を伝える構造体としてはかなり複雑な形状の部類に入るのではないでしょうか。種類(型式)が異なるとスペクトルはかなり異なるようです。HK-808との比較のためHK-3のスペクトルも測定しましたが、かなり異なっていました。のめり込みそうになるため比較・分析は諦めました。参考までスペクトルを示します(HK-3,HK-808改造前後のスペクトル)。

今回の改造は、下敷きの効果と合わせて予想以上の効果があり大変満足しています。

昔のように808君と一体感を感じながらゆっくりとCW交信を楽しむことが出来るようになりました。



HK-808の本体には手を入れない方法による改造とその効果について紹介しました。
尚、今回の「改造」は「改善」などという大それたものではありませんので誤解無き様お願い致します。それにしてもハイモンドさんには大変申し訳ない気持ちで一杯です。すみません。